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良い1on1事例と悪い1on1事例の比較 - 相互理解編 -

1on1ミーティングに正解の形は存在しませんが、人間心理や人材育成、組織上の狙いなどセオリーに沿った場合に、気を付けるべきポイントが存在します。
今回は、『相互理解』という1on1の重要観点に立った場合のポイントをお伝えします。

1on1事例A

部下:「最近、うまく成果がでていない気がしていて、なんとか改善したいと思っています。」
上司:「なるほど。。。成果はどのような数値で図っているのですか?」
部下:「若干それが曖昧で。。。」
上司:「それは良くないですね。なぜそうなっているのでしょうか?」
部下:「実は、私は数値管理系の業務に苦手意識があり、数値で追うのが苦手です」
上司:「それはダメですね。営業マンとしては、数値管理は必須ですからね。」
部下:「そうですよね。。。ここは改善しなければいけないですね。。。」

事例Aの解説

対課題のコンサルティングと、対人で相手の感情を取り扱うコミュニケーションは、大きな違いが存在します。
上記の1on1事例では、相手の自己開示に対して、頭から否定をしている点が、人間心理や人材育成の観点では修正したいポイントです。
自分の苦手分野を頭ごなしに否定されてしまうことは、人間心理上強い負荷がかかります。それにより、苦手分野や弱点について上司との率直なコミュニケーションをとりづらくなる可能性があり、結果として課題が放置され、苦手意識が色濃くなっていくことも考えられます。

さらに、そもそも苦手分野についても容赦なく頭から否定を飛ばしてしまうスタンスがチーム内に浸透してしまうことで、心理的安全性が担保されず、長期的に安心感を持った仕事がしづらくなるという点も見過ごせません。
これらを踏まえると、

  1. フィードバックを丁寧に実施すること
  2. 相互理解のスタンスに立つこと

2点を押さえたコミュニケーションがポイントとなります。上記を押さえた会話とは、一体どのような会話になるのでしょうか?

1on1事例B

部下:「最近、うまく成果がでていない気がしていて、なんとか改善したいと思っています。」
上司:「なるほど。。。成果はどのような数値で図っているのですか?」
部下:「若干それが曖昧で。。。」
上司:「そうでしたか。ちなみに、曖昧になっている理由は心当たりはありますか?」
部下:「実は、私は数値管理系の業務に苦手意識があり、数値で追うのが苦手です」
上司:「なるほど。そういった傾向があるのですね。ちなみに、どんなところに苦手意識があるのでしょうか?」
部下:「自分の実力不足ということは十分承知なのですが、目標に向けた数値ロジックを立てることはできるのですが、気が付いたら数値状況がわからなくなってしまいます」
上司:「そうでしたか。そうなると、数値が苦手というよりは、管理のタスクが苦手というイメージが近いでしょうか?」
部下:「今まで気が付かなかったですが、たしかに、その通りです。」
上司:「なるほど、理解しました。個人的には、将来のマネージャーに向けたキャリアを見据えて、少しずつそういった点についても上達をしていただきたいという思いもありつつ、、、〇〇さんがこのような点についての苦手意識があることは理解できました。ありがとうございます。今後どうしていきたいですか?」
部下:「そうですね・・・」

相互理解を深めるコミュニケーション

相互理解とは、相手の状況や考え、さらには価値観や志向性等を理解し合うことを指します。上記の事例では、自分が部下に対して持っている期待と、部下の状況や性質を理解することを区別して対応しています。そのうえで相手の状況を正しく理解しようと努めた結果、部下自身も気が付いていなかった課題を共有することができました。このように純粋に相手のことを理解しつつ、自分の考えや意見をすり合わせていくことが、相互理解のコミュニケーションです。

▼相互理解に不可欠な「傾聴」について理解を深めたい方はこちら
1on1ミーティングでも活用できる「コーチング視点での傾聴のポイント」

これらのコミュニケーションをとることによって、
・相手の状況を理解できるため、適切な対応が可能になる
・自分の意見や考えを受け入れてくれやすくなり、結果として行動に結びつきやすくなる
・相互理解が深まるため、信頼関係が構築される
といったメリットがあります。

1on1は部下中心の場といわれています。そのスタンスを成立させるためには相互理解に努めることは不可欠です。改めて、正しい理解に注力するというポイントを理解していきましょう