成長支援を学ぶ-2つの事例の比較-
1on1ミーティングゴールの1つに、自律型人材の育成というものがあります。現代において、自分の頭で考え、判断し、成果を出せる人材を育成することが、部下マネジメントの1つの終着点といえるでしょう。それでは、どのように成長を支援し人材を育成すれば良いのでしょうか?特に、指導ではなく、『成長支援』と言われたときに、何をすれば良いのか、とピンと来ない方もいると思います。今回は、対話の実例を通じて、成長支援における2つのやり方を確認してみましょう。
1on1事例A
上司:「今月に、重点的に伸ばしていきたいテーマはありますか?」
部下:「今月は、顧客へのヒアリングの技術を伸ばしていきたいです。」
上司:「なるほど。。。ヒアリングですね。ヒアリングでいえば、例えば、自社サービスの良さを正しく理解した上で、空気感を良くしながら、顧客が求めているものをマッチさせていくというような3つの観点などをイメージしましたが、どの辺に課題点があると思いますか?」
部下:「それでいいますと、顧客が求めていることの解像度が荒く、理解が不足している気がしています。」
上司:「なるほど。それでは、顧客が求めていることを理解するために、過去の商談の記録を振り返り、どういうことを求めているのか調べる。というのはどうでしょうか?」
部下:「たしかに、それは有効そうですね。。。はい、そこからやってみます。」
事例Aの解説
成長支援には、細かくわけると2つの要素があります。
- 決めたテーマに関する成長を実現させること
- 知識・技術を伸ばす行為自体(学習の技術)を上達させること
上記の場合ですと、『1, 決めたテーマに関する成長を実現させる』という点において、ヒアリングの技術自体は伸ばす具体的な手段を提案することで、成長の支援を行っています。このような支援の方法をティーチングといいます。提案をするという形をとっているため、上司側に同一テーマにおける知識や見識があることが前提となりますが、一般的な上司部下間での指導の形に近いといえます。
一方、『2, 知識・技術を伸ばすという行為自体(学習の技術)を上達させる』ことに関してはどうでしょうか。
課題の特定や具体的な取り組みを自分自身で考えていないため、自己学習の機会を渡せていないとも捉えられます。
このような対応を重ねていくと、自分自身で課題を特定し、解決策や成長の手段を考案することに慣れていない状態が続いてしまいます。
学習の技術を磨くような成長支援はどのようにすればよいのでしょうか。
1on1事例B
上司:「今月に、重点的に伸ばしていきたいテーマはありますか?」
部下:「今月は、顧客へのヒアリングの技術を伸ばしていきたいです。」
上司:「なるほど。。。ヒアリングですね。具体的にはどのような点を伸ばしていきたいとお考えですか?」
部下:「そうですね。対峙しているお客様が何を求めているのか、を掴めていない気がします。」
上司:「なるほど、、、他にも気になるところはありますか?」
部下:「あとは、苦手なタイプの顧客がいることもあります。リアクションの薄い顧客に対しての対応が苦手で・・・」
上司:「そうですか。どちらの課題の重要度が高そうですか?」
部下:「そうですね・・・後者の方が個人的には気になっています。」
上司:「承知しました。具体的にはどういう行動を取っていくと解決に繋がっていくと思いますか?」
部下:「そうですね・・・。あまりこの課題感に対して他の方の意見を聞いたことがなかったので、一旦聞いてみようと思います。」
上司:「いいですね。」
部下:「ありがとうございます。ちなみに、〇〇さんはこのようなタイプの方の対応で意識されていることはありますか?・・・」
事例Bの解説
自律型の人材とは、自己判断により問題解決ができる社員を指します。そのためには、自分自身で課題点を発見し、成長を遂げることで解決するというプロセスを経験させることが欠かせません。
事例Bでは、質問を多用することで、「何が課題で、どのような施策を行うのか」という観点から考えさせているため、学習の技術自体も伸びる機会を部下に渡しています。
ただし、注意点は、自分自身で取り組み内容を決めてもらう際は、失敗も往々にして起こりやすいという点です。その点も許容しつつ、上手くいかなかったときでも心理的な安全性を担保しつつ振り返りをするように支援を入れる必要があります。
▼失敗は成功のもと?1on1ミーティングで失敗を許容すべき理由はこちら
1on1の中で行う成長支援とは?
まとめると、成長支援のゴールをどこに置くのか?によって、成長支援をどのように行うのかが変わります。
仮に、ある一定のテーマについて知識や技術を身に着けることのみをゴールにする場合は、取り組む具体的な施策に対してのアドバイスを渡すことが効果的です。(ティーチングやアドバイス)
一方、自己学習の技術から体得してほしい場合は、アドバイスを渡すのではなく、アイディアを引き出し、挑戦のサポートに徹することが推奨されます。
以上のことを踏まえつつ、1on1ミーティングで部下の成長を支援してみましょう。