時差をメリットに!世界中の多様なメンバーを受け入れる「温かい」組織のつくり方
新型コロナウイルスの流行を機に「仕事は会社でするもの」という概念が覆され、今や多くの企業がリモートワークを導入しています。しかし、場所に縛られずに働くことが可能になり、人々が働きやすい環境になった一方で、それを受け入れる難しさや、組織作りの課題に直面している企業も多いのではないでしょうか。
今回は、2005年の創業当時からフルリモートに対応し、社員のエンゲージメントを高めながら事業拡大に成功している株式会社ニットの組織体制について、同社の宇治川様、今西様に、チームアップ株式会社の中川が話を伺いました。
メンバーの居住地は世界35の国と地域
━━ まずは、自己紹介をお願いします。
宇治川:私はアフリカのルワンダという国に住んでおり、株式会社ニットで人事を担当しています。以前は日本の企業に勤めていましたが、家族の海外勤務に帯同するために退職。赴任先の国での新しい仕事を検討していた時に出会ったのが、当社のHELP YOUというオンラインアウトソーシングサービスでした。その後、当社が株式会社になった際にフルコミットメンバーとしてジョインしました。
━━ 貴社には、国外在住の方が何名くらいいらっしゃるのでしょうか。
宇治川:組織全体の20%以上が海外に住んでおり、住んでいる国は、ヨーロッパ、アメリカなど世界35の国と地域にのぼります。
━━ そんなにたくさんいらっしゃるのですね。住んでいる地域も様々ということですが、時差にはどのように対処されていますか。
宇治川:全員が同じ時間に集まるのは難しいので、録画配信を併用して対応しています。ただ、時差というとどうしてもデメリットと思われがちなのですが、上手に活かせば良い面もたくさんあるんですよ。たとえば私の所属する人事採用チームでは、日本、ルワンダ、ニューヨーク、トルコなど各地の時差を利用した24時間体制での対応を試みています。採用面接にも時差を活用していて、応募者の方が仕事を終えた日本の夜の時間帯に行うこともあります。
━━ 時差をデメリットではなくメリットととらえて、うまく活用されているのですね。
宇治川:そうですね。私たちは、チーム体制を活かすことで、価値を生み出すことに成功してきました。海外在住メンバーが増えることで、国内メンバーだけでは提供できない価値も生み出しています。たとえば夕方に仕事の依頼があった時、日本国内で対応すると着手するのが翌日になりますよね。しかし海外メンバーであれば、その日の夜間に仕上げて翌朝には納品することもできます。チーム内にはさまざまな経験や知識を持つメンバーがいるので、それぞれの能力を活かして良いものを提供できるというのも、私たちの強みです。海外メンバーに限らず、いろんな状況のメンバーがいますが、それぞれが自分の価値を発揮するために考え、行動しています。
━━ ワールドワイドでフルリモートということですので、それに適したコミュニケーション能力が必要かと思います。会社に合う人材を採用するために工夫なさっていることがあれば教えてください。
今西:採用のステップとして、お仕事体験をしていただいています。お仕事体験では、実際の現場と同じようにエクセルやパワーポイントでの書類作成を依頼されるので、指示通りに作成して提出します。
宇治川:当社は「未来を自分で選択できる社会をつくる」というビジョンを掲げていて、採用活動もそれにつながるように行っています。つまり、私たち企業側だけが採用する人材を選ぶのではなく、応募者の方にニットで働くというのはどういうことなのかをきちんと理解していただき、自分で入社を選択してもらいたいのです。同僚が隣にいるわけではないリモート環境で、口頭ではなくテキストで仕事の依頼を受け、作成して提出する。その過程を実際に体験していただき、自分に合うかどうかを判断していただいています。
リモートでも働きやすい「温かい」組織を作れる理由
━━ 今西様は、このような特殊な環境であることを承知のうえで入社なさったということですよね。入社を選択されたのは、どのような点に魅力を感じられたからでしょうか。
今西:私は、産後8か月でニットにジョインしました。ニットのオウンドメディア「くらしと仕事」で様々な環境の中働くメンバーのインタビュー記事を読み、これから育児という未知の世界がはじまる私でも働けると思ったのが決断した理由です。実際に働き始めてみて感じたのは、温かい組織だということ。リモートワークでありながらも孤独を感じることはなく、楽しく働いています。
━━ リモートでお互いに会うこともない環境なのに「温かい組織」が作れるのはなぜなのでしょうか。
宇治川:会うことがないからこそ、皆が相手のことを考えながら仕事をしているということ、そして仕事以外のコミュニケーションの場が用意されていることが、良い関係を保つ要因になっていると思います。たとえば週に1回行っている雑談タイムもその一つで、あえて業務の話ではなく、雑談をする場を作るようにしています。組織内にオンラインコミュニティもたくさんあり、興味や趣味が合うメンバー同士で活発に活動していますね。
今西:当社のオンラインコミュニティは、業務と業務以外の大きく2種類に分かれています。業務のコミュニティは、パワーポイント資料の作り方を共有したり、プロのライターが構成案の作り方やインタビューの仕方を教えたりといった情報交換が中心。業務以外のコミュニティでは、同じ趣味を持つメンバーが集まって会話をしています。コミュニティで関係構築ができていると、業務で一緒になったときに仕事をしやすいですし、質問などもしやすいので私はとても助かっています。
━━ コミュニティは強制参加ですか。自由参加ですか。
宇治川:自由参加です。相手と共通の興味や関心があると人間関係を構築しやすいので、コミュニティで関係構築ができていくのは良いことだと思います。しかし、コミュニティに属するかどうかはあくまでもご本人の希望次第ですので、属したくない人に強制することはありません。
多様性を受け入れる組織文化の作り方
━━ 働く仲間の多様性を受け入れる土台がしっかりしていて、エンゲージメントを高める工夫も常にされている素晴らしい組織ですね。ここからさらに組織を良くするための課題や、今後の展望がおありでしたら教えてください。
宇治川:コロナをきっかけに、当社が選ばれる理由が変わりました。以前は、リモートワークができるという理由で子育てや介護をしている人が多くジョインしていましたが、リモートワークが一般的になってからは、当社の組織に興味を持って選んでくれる人が増えています。世の中の動きに合わせて「選択したい未来」がシフトしたり増えてきたりすると思うので、そのニーズにいかに向き合って体現していくかが今後の展望だと思っています。
━━ 最後に、リモートワークでの組織開発に苦戦する企業様向けにぜひアドバイスをお願いいたします。
宇治川:リモートワークでは、顔が見えないからこそ心理的安全性の確保が大切だと考えています。時に齟齬が生まれることもあっても、お互いをリスペクトし合うことで相手の考えを受け入れられるようになります。そこを意識することで良い組織になるのではと思います。