特集
人の可能性を引き出す組織のレシピ

「組織拡大」と「働きがい」を両立──迎えた社員を活躍させる、コンサルティングファームの徹底した人事施策

コンサルティングを主幹にソリューション提供するイグニション・ポイント株式会社は、Great Place to Work® Institute Japan(GPTW)の「働きがいのある会社」ランキングで6年連続選出され続けている企業です。80名だった従業員をこの3年間で250名以上にまで増やし、売上を毎年平均2倍のペースで急拡大させながら、徹底した人事施策によって従業員の働きがいを向上させることにも成功しています。

今回は、チームアップ株式会社代表の中川がイグニション・ポイント株式会社のコーポレート本部 人事/総務/広報責任者の宮崎達矢様をお迎えし、従業員エンゲージメントを高め、会社に貢献する人材を育てる人事制度について話を伺いました。

徹底した人事施策により、エンゲージメント向上に成功

━━ まずは、宮崎様の現在の業務内容を教えてください。

私は現在、人事、総務、広報の責任者をしています。3年前にイグニション・ポイントに入社して以来、採用マネジメントや人事制度作り、労務対応、グループ会社の立ち上げ支援などを行ってきました。今年からは広報にも力を入れており、新たに専任の担当者を採用してチームを結成し、活動しています。

━━ 貴社ではここ数年、多くの社員を採用して規模を拡大されていると伺いました。会社の規模が拡大すると従業員エンゲージメントが低下しやすいといわれていますが、貴社の場合はいかがでしょうか。

組織規模は急速に拡大していますが、社員のエンゲージメントはむしろ向上しています。当社では3年ほど前から組織サーベイを取り入れており、エンゲージメント指数を毎月とっているのですが、その数値は3年前と比較して上昇しています。GPTWでの順位が上がってきていることからも、働きがいのある会社と評価されているととらえています。

━━ その要因はどこにあるとお考えですか。

さまざまな施策の積み重ねの結果だと思います。たとえばこの3年間はマネージャーの教育に力を入れており、その一環として2週間に1回の1on1ミーティングも導入しました。1on1は全員に義務付けており、全社員のカレンダーを人事が確認し、予定が登録されていない場合はアラートを出すところまで徹底して行っています。

━━ 1on1を行うかどうかを社員の自主性に任せる企業も多い中、そこまで徹底されているのはなぜなのでしょうか。

それだけ1on1が大切だと思っているからです。エンゲージメントなどの数値はサーベイでとれますが、部下が今何を考えていて、何に不満を持っているかは対話しないとわかりません。会社によって、マネジメント層以上は1on1をしないケースも多いと聞いていますが、当社の場合は役員も含め全員が行っています。

━━ 1on1で結果を出すために、工夫されていることはありますか。

メンバーが上司に対して自己開示しやすい環境を作るために、まずは上司からメンバーに対して自己開示するように促しています。自分がどのような考えを持っていて、評価の時にどのようなポイントを見ているのか。そして、これまでどういうキャリアを築いてきて、今後どうなりたいのか。2週間に1回そのような会話をすることで、信頼関係の醸成にもつながっていると考えています。

━━ 1on1を継続することで、どのような効果があったと感じていらっしゃいますか。

エンゲージメント指数が上がり、離職率が下がりました。また、社員紹介によりリファラルで友人知人を採用する機会も増えています。これは、マネージャーが部下のことを理解して仕事を任せるようになり、社員の満足度が高くなったことの表れだとも思っています。

マネージャーを育てるための評価制度改革

━━ 他にも、マネージャーを育てるために実施されていることがあれば教えてください。

評価基準の見直しを行いました。新しく取り入れたのは、当社が定める3つのバリュー「誰もが起業家の精神で」「予測不可能をのりこなす」「最高の自分と最高の仲間」を実現できているかどうかを評価する仕組みです。評価項目を成果とバリューに分け、成果とバリューの両方を達成して初めて評価が上がるようにしました。

成果の方には、売上だけでなく組織マネジメントに関する項目を新たに加えました。自分がマネジメントしているチームのエンゲージメント指数や離職率、採用貢献度なども評価項目に入れ、それらを意識せざるをえないような制度にしています。

━━ 会社が目指す方向を向くように作られた制度なのですね。

制度は会社からのメッセージですので、会社が大事にしているポイントが評価項目に入っていなければ矛盾が生じます。当社の評価制度では、会社の方針との間に一貫性を持たせ、会社と同じ方向を向いている人が高く評価されるようにしました。

━━ そのような人事制度改革に反発はありませんでしたか。

反発は特にありませんでした。社員数がどんどん増えていく拡大期に実施したことも、浸透しやすかった要因かもしれません。たとえば大きな組織であれば社員全員に浸透させるのは難しかったかもしれませんが、入社して間もない社員が多い環境で実施しましたので、受け入れてもらいやすかったのではないでしょうか。

━━ これから従業員1,000人を目指す中で「ここを変えていきたい」「ここは残したい」というポイントはありますか。

会社に貢献している人がより仕事にやりがいを感じ、報酬を得られるように改善していきたいと思っています。成果を上げている人に対しては、しっかりそれに見合った評価をしたい。一方なかなか成果が上がらない人についても、たとえば研修や教育制度を充実させたり、得意分野を任せるようにしてそこで活躍して評価されるようにしていきたいですね。

人事は、会社全体を俯瞰してみることが大切

━━ 貴社のように規模拡大を目指しながらも、組織の規模の壁に苦しんでいる企業も多く存在します。そのような企業の皆様に、人事としてどのように動くと良いのか、ぜひアドバイスをお願いします。

人事では、人を採用することから始まり、その人を活躍させて会社の中核を担うメンバーに育てていく、そして残念ながら退職をしてしまうメンバーもいるので、いかにポジティブな状態での退職に持っていくかというところまでを考えることが重要だと私は思っています。採用担当が採用しか見ていないと、人を増やしているつもりでも実はどんどん辞めてしまっていた、ということも起こりやすくなります。そうならないためにも、一つのチームとして会社全体を見られるようにすることが大切なのです。

━━ 特に拡大期の人事では、どのように仕事を進めるのが良いと思われますか。

コーポレートの仕事はルーティンになりやすいという特徴があり、どうしても慣れが出てきてしまいます。そうするとそれ以上成長・モチベーション向上が難しくなるので、やりたいこと、やるべきことを見つけたら、積極的にどんどん進めていってほしいですね。

採用担当は採用することが仕事ではありますが、もう少し先のゴールを達成するためには他にもやらなければならないことがあるはずです。それを広げようとしてチャレンジするのは大歓迎。最初の一歩を踏み出せば、会社や上司がサポートしてくれます。自分で踏み出せば面白い仕事もたくさんあるので、ぜひ挑戦してもらいたいですね。