特集
人の可能性を引き出す組織のレシピ

設立21年目に掲げたミッション・ビジョン・バリュー。北の達人コーポレーションが事業拡大期の組織のために取り組んでいること

「びっくりするほど良い化粧品・健康食品」を販売する「北の快適工房」の運営会社 北の達人コーポレーションでは、2022年にMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)を策定し、その行動指針となるクレドの運用を開始。導入からわずか2ヶ月ながら既に一定の効果が表れており、順調に社内に浸透し始めています。

会社設立から20年以上経過し、企業が成長しているタイミングでMVVを策定したのは、拡大期だからこその課題を解決するため。ディスカッションを重ねてしっかり作り込み、綿密な施策設計をしたことが功を奏し、軌道に乗せることに成功しました。

今回は、北の達人コーポレーションのYuta.U様に、MVVをどのように策定し、社内に浸透させてきたのか、成功の秘訣を伺いました。

適切な人選・綿密な導入戦略により、順調なすべり出しに成功

━━貴社では、企業の拡大期にあり事業が順調なタイミングでMVVを作られたと伺っております、その背景にはどのようなことがあったのでしょうか。

MVV策定に取り組むことになった背景には、大きく二つのことがありました。一つは、会社のビジョンと個人の行動のずれをなくすために、社内向けの指針を作りかったこと。そしてもう一つは、ロイヤリティの高い人材を採用するために、社外向けに会社の方向性を示すものを用意したかったこと。その二つを実現するために、MVVとクレドの策定に踏み切りました。

━━会社のビジョンと行動のずれというのは、具体的にどのようなことでしょうか。

当社では、一人ひとりのお客様と向き合い、「お客様のために」という視点に立って仕事をすることを大切にしています。しかし、会社の規模拡大にともなってそれを浸透させるのが難しくなり、時として行動が伴わない場面も見られるようになりました。

これは、社員が増えたことによって生まれた問題です。以前は1人の社員が複数の仕事を兼務していたため、全員がお客様と接していました。しかし規模拡大によってお客様と接する機会のない部署ができたことで、「お客様のために」という意識が薄れてきてしまったのだと思います。

━━ MVVを作ったものの、現場の実態に即しておらず形骸化してしまったという例も見聞きしますが、貴社では導入2ヶ月にして既に定着し始めています。成功の要因はどのような点にあるとお考えですか。

経営層からのトップダウンではなく、現場主体のボトムアップでMVVを決めたことが、一つの大きな要因になっているのではないかと思います。MVVの策定にあたっては約20名からなるプロジェクトチームを作ったのですが、そのメンバーは社内の各部署からさまざまな年齢の社員を集めて構成しました。そしてメンバーに背景や現状の課題などを十分に説明し、よく理解してもらったうえで作成したため、会社の目指す方向性を現場の実態に合わせて整理できたのだと考えています。

もう一つの要因は、課題を設定して、着実に進めている点にあると思います。スタート期における重要課題は「社内での認知度を向上し、いかに行動に結びつけるか」です。そこでまず、ミッション・ビジョン・バリュー発表会を全社向けに実施し、認識してもらう場を作りました。現在は、MVVに繋がる行動にフォーカスし、行動指針として設定しているクレドの浸透に力を入れています。たとえば、毎日の朝会で「今日のクレド」を読み上げ、各自がそれに対する行動目標を発表する時間を設けることで、認知度、理解度の向上とともに日々の行動のクセづけを図っています。また、クレドに込められた思いや行動について社長が話す動画を制作、視聴することで、適切な行動の認識に齟齬が生じないようにして、MVVに添った行動の目線合わせを行っています。もちろんその時その時の状況に合わせて、常にアップデートもしていますが、設定した課題に対して解決するためにどうするかという、最終的な目的をぶらさずに動いているため、頓挫すること無く軌道に乗せられたのだと考えています。

━━プロジェクトメンバーを各部署から集められたということですが、人選はどのようにして行われたのでしょうか。

役職、部署、年齢、中途/新卒と満遍なく声をかけました。希望者を募る方が良かったかもしれませんが、当社の場合は適正人数以上の多くの社員が集まってくれることが予想されましたのでこちらからお声がけをする形を取りました。限られた人数に絞りはしましたが、気持ちの上では全社一丸となって作成するという意気込みで取り組みました。

━━プロジェクトにはどれくらいの時間をかけられたのでしょうか。

長いと2〜3時間に及ぶディスカッションを、10ヶ月間で合計16回行いました。当初は1回あたり1〜2時間、6回程度の集まりを予定していたのですが、メンバーが非常に積極的で毎回とても盛り上がり、想定以上の時間をかける結果になりました。充実した議論を重ねたことにより、自分達の大切なことに立ち返った納得のできるMVVができ上がったと思っています。

MVVの内容を公開!狙い通りの変化を起こす施策

━━MVVの内容をぜひ教えてください。

ミッション・ビジョン・バリュー
理念体系

ミッション:びっくりするほど良い商品で、世界のQOLを1%上げる

当社には、「びっくりするほど良い商品ができた時にしか発売しない」というルールがあります。開発した商品の品質チェックは800項目にも及び、モニター調査を何度も行い、全ての条件をクリアしたら全社員が1ヶ月間かけて実際の生活環境で使う「生活環境テスト」を実施。実際に商品化されるのは企画段階から計算して約2%です。私たちは、こうして作り上げた「びっくりするほど良い商品」をお客様に届け、日本の、そして世界のQOL(Quality Of Life)を高めることをミッションに掲げています。

ビジョン:日本を代表する次世代のグローバルメーカーになる

日本には、世界的に知られているグローバルメーカーが既にたくさんあります。ただし、それらは実店舗を持つメーカーが多いと考えています。最近では実店舗を持たず、インターネットのみで流通するインターネット発信の商品・サービスが増加してきています。我々が目指すのは、そんなデジタル世代から生まれた“次世代の”グローバルメーカーになること。インターネットには国境がありません。今後も国内に限定することなく、世界へと私たちの仕事の価値を広げて行き、日本を代表するグローバルメーカーになります。

バリュー:「おもしろい」をカタチにして「ありがとう」を生み出す達人集団

私たちはお客様の満足に繋がりそうな、まだ実現されていない「おもしろい」アイディアを、机上の空論で終わらせるのではなく、検討を重ね、商品という形にしてお客様にお届けします。その結果として、「ありがとう」の声をいただいてはじめて私たちの仕事は完了します。最後の「達人集団」には、妥協せずによりよい商品をお届けできるプロフェッショナル集団でありたいという思いが込められています。

以上が、当社のMVVです。それを実現するための行動指針を、クレドにしています。

━━MVV・クレドを導入したことで、社内にどのような変化がありましたか。

朝会でのクレド読み合わせの時間だけでなく、日常で行われているミーティングや発表などで、「これはお客様のためになっているか?」「QOLを上げられるようにしましょう!」といった、MVVに絡めた発言をすることが増えました。

またクレドに記載されている表現、キーワードで会話が進むことが多くなり、クレドに基づいた行動が見られるようになってきました。

社外の方がいらっしゃる場でも、MVVがベースとなった発信をしているのを目にすることがあり、全社員がしっかりとMVVを意識して、文化として根付かせようとしてくれていると強く感じています。

━━狙い通りの変化が起こっているのですね。では、今後より組織に浸透させていくために考えていらっしゃる施策などはありますか。

今は、認知度向上のためにデスクトップ画像を作成したり、MVV動画を社内モニターでずっと流したりといったことを行っています。また、MVVに合った方に応募していただけるよう、採用ページのリニューアルもしました。

今後は、社内報を作ったり、毎月のMVP表彰者が何のクレドに基づいて行動したのかをインタビューしたりして、よりMVVに添った行動が賞賛されるような施策を進めていきたいと考えています。また、1年に1回以上は全社や各部署という単位でMVVを考える時間を作ることなども検討しています。

━━最後に、これからMVVを作っていく企業様や施策が浸透せず困っている企業様に向けて、ぜひアドバイスをお願いいたします。

経営層、企業側は意見を出しやすい話し合う場を作ることに注力し、ボトムアップでMVVを作り上げることが大事だと思っています。
またMVVの浸透においては、まず社員に存在を知ってもらい、MVVに添った行動をしてもらう必要があります。そのために、MVVの周知は大々的に行い、その後は身近な存在にできるような工夫(当社の場合は、毎朝クレドを読み合わせるなど)を、各企業様の文化に合わせて実施されるのが良いと思います。