ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)を社内に浸透させる1on1ミーティングのあり方
近年、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)に注目が集まり、企業によってさまざまな対応がなされています。多くの方法がある中で、私たちTeamUpは、1on1を活用したD&Iの促進は非常に効果的であると考えています。1on1は、まさに多様な価値観への理解と受容のプロセスとも言えるのです。
認知バイアスや思い込みは、多様性とその受容を阻害する
性別や国籍・障害の有無など属性に関わるものから、キャリアへの考え方や時短・育休を活用した働き方など、さまざまな価値観を持つ人々の個性や能力を活かそう、というのがD&Iの考え方です。
しかし、これまで各人に蓄積されてきた認知バイアスや思い込みはD&I促進を邪魔します。例えば、社内で「普通は〜〜だよね」や「〜〜に決まってるでしょ」といった発言が、どれくらい聞こえてくるでしょうか。
このような一方的な決めつけによって、不快な思いをしたり能力を発揮できなかった社員がいたかもしれません。D&Iにはさまざまな側面がありますが、以下では「キャリアに対する考え方」の例について取り上げます。
上司の思い込みによる部下育成の失敗例
ある上司は、自分の立場から見てモチベーションが落ち込み気味の部下Aさんの育成に困っています。上司は「成長意欲がない」「昇進したくないのか?」とAさんに伝えたものの、あまり反応がないのでイライラしていました。
一方、Aさんは仕事の内容自体は好きでした。しかし、これまでの仕組み上の問題で周囲とのコミュニケーションが複雑であり、集中力が削がれてしまう状態が続き、結果的に以前に比べてモチベーションが下がっていました。そして、このことは上司に伝えられていません。
Aさんのモチベーションが下がっていたのは、上司の思い込みとは別の理由でした。Aさんは現段階では昇進に関心がないだけであり、仕事内容に対する向上心はあるので、このまま黙ってもっと集中できる環境が整っている会社への転職を考えるかもしれません。
仕事に夢中になる背景は人それぞれであり、従来の考え方で理想像を押し付けてしまうと、部下が望んでいることや部下が抱えている本当の課題に気がつけず、部下の成長機会を失ってしまいます。このとき、上司はどうやって部下の状況や考えに気づき、受け入れることができるのでしょうか?
1on1は相互理解のプロセスである
上司が部下の価値観を理解できるようになったり、部下が抱えている本当の課題に気づけるようになったりするためには、思っている以上のコミュニケーション量が必要です。そのような機会を意図的につくれるのが1on1です。
1on1の基本的な姿勢に「傾聴」があります。「どうしてそう思ったの?」「もう少し聞かせて」と、部下の意見を尊重し耳を傾けることを繰り返すことで、これまでの一方的に決めつけていた姿勢が徐々に変化していくきっかけになります。
上司の経験値が大事なこともありますが、新しい視点が大事なこともあります。今までの自分にとっては受け入れ難い考え方に触れることもあるかもしれませんが、1on1を活用してまずは部下に対して「なるほど」と返事をしてみましょう。
対話を通して多様な視点を獲得する
D&Iの促進には、各人が抱えている認知バイアスや思い込みを適切に取り払い、目の前で起きていることをありのままに受け入れる訓練が必要です。その一つの方法が、1on1であると考えます。
1on1で継続的な対話をすることで、各人の内省を促し、多様な視点を獲得できるようになります。これまで「優劣」だと捉えていたものは、ただの「タイプの違い」だったと気づかされることも多いでしょう。
一人ひとりがこの視点を獲得していくことで、周りの社員に対しても、顧客に対しても、より価値を届けられる存在になれるのではないでしょうか。