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自律型キャリア形成が求められるいま、キャリアプランを考えるためのポイント

VUCA時代と言われるなか、会社が主体となって社員のキャリア形成を描く考え方から、働く個人が主体となり、キャリア自律性を高めることがより強く求められています。

なぜキャリアプランが必要?キャリアプランを設計することで得られること

会社は社員一人ひとりのキャリア形成を支援する、という考え方に移行していくなか、以下の3つ観点で、キャリアプランを設計するメリットがあると考えられます。

①自身の働きがい、働くうえでの納得度・満足度の向上

現在多くの企業で重要視されている「ウェルビーイングな働き方」を実現するためには、自身の働く意義や目的を認識でき、その目的に向けて没頭できている状態・ポジティブな感情を抱けている状態を生み出すことが重要です。そのためにも、キャリアプランを設計することで、どこに向かうために業務に取り組んでいるのかを納得感を持つことができるようになります。

②適度なストレッチゾーンで、業務に取り組むことが可能

キャリアプランを設計することで、適切な成長のポイントと時間軸を明確にすることができます。

成長のポイントと時間軸が明確になっていることで、健全に自身をストレッチゾーンへと促し、仕事の充実度を高めることができます。反対に成長のポイントと時間軸が明確になっていないことで、コンフォートゾーンにとどまり続けてしまう可能性があります。

③仕事における機会獲得、他者からのフィードバックの獲得

キャリアプランを設計し、上司を含めた関係者に開示することで、そのキャリアプランに沿った機会を獲得することやフィードバックを得ることに繋がります。

こんな経験をしたい、こんなキャリアを歩みたいと、関係者に自己開示することで、機会を得やすい状態をつくることが可能です。

キャリアプランを考えるうえでの枠組み・考え方

では、キャリアプランはどのように考えていくとよいのか。本コラムではキャリアプランを考えるうえで、代表的なmust-will-canのフレームをご紹介します。

must-will-canの考え方は、「現在、または将来組織に求められることはなにか?」「自身のやりたいこと・ありたい姿はどのようなものか?」「自身の強みや持っているスキル・経験、また行動特性はどのようなものがあるか?」の3つの観点で、組織や仕事・自身を整理することで今後のキャリアプランを考えていく枠組みです。

must

現在、または将来的に会社から求められることはなにか?を整理します。

会社が目指す方向性や戦略、そのために注力するべき取り組みは、現在において、非常に変化が激しくなっています。そういった環境のなか、自分自身への期待値は何なのかを把握する、すり合わせることはより重要性が高まりつつあります。

will

自身がどういった人生を描きたいか?どんなキャリアを描きたいか?どうありたいか?どんな想いや価値観を大切にしたいか?を整理します。

言葉にすると簡単ではありますが、自身のwillを整理することが難しいと感じる方は多くいるのではないでしょうか。

willを整理するうえでは、無意識の「やらなければいけない」「こうあらねばならない」の考えから「やりたい」「こうありたい」へと転換していく必要があります。そのためには、いま自身が考える「やらなければならない」「こうあらねばならない」をリストアップし、その中から自分が本当にやりたいと思えるものを見つけ出すことが重要です。

また、「やりたい」「こうありたい」を見つけ出すにあたり「得意なこと」「没頭できること」「繰り返しやり続けていること」にヒントが隠れている可能性があるので、この3つのポイントで整理してみることをオススメします。

can

canを整理するうえでは、現在の職務や仕事に関わる知識、経験、強み以外の視点を持つことが重要です。現在担っている役割においてのcanを考えてしまいがちですが、仕事に直接的には関わっていない強みや根本にある行動特性なども考慮することで、今まで見えていなかったcanを発見することにも繋がります。

キャリアプランを考えるうえで、意識したいポイント

キャリアプランを設計するうえでのメリットや、考え方の枠組みを理解しつつも、実際にキャリアプランを考えると思った以上に難しさを感じるのではないでしょうか。最後にキャリアプランを考えるうえで意識したいポイントをお伝えします。

まずは「仮説で設計する」

キャリア観は数年単位でどうなってるかはわからないし、半年後・1年後に変化している可能性も充分にありえます。大事なことは、変わる可能性がある前提で、いったん現時点での仮説として設計すること。やりたいことがわからないと迷うビジネスパーソンは非常に多く、そのまま年齢を重ねていくケースも多く見受けられます。

最終的にいまのキャリアプランと異なり、変わってしまってもよいので、現時点ではこれかな、と設計してしまい、そこに向かって行動していくことが重要です。

興味関心は知識量に比例する

やりたいことがわからないからキャリアプランを描けない、どんなキャリアにも興味関心がわかない、という声もよく伺います。そこで重要な考え方は、「興味関心は知識量に比例する」ということです。

やりたいことや興味を持てるキャリアがないのは、知識量が足りていないから。知識量が増えれば、興味関心は自然と高まっていきます。興味がわかない、関心が持てないと考えるまえに、まずは自分が関わっている範囲において、知識量を増やすことから注力することをお勧めします。

他者からのフィードバックや意見をもとにブラッシュアップする

自身の考えるキャリアプランは、本当にこれでよいのか、もっと別の選択肢があるのではないか、と自信が持てない状況になりがちではないでしょうか。自身のキャリアの可能性を広げ、新たな視点を獲得するためにも、積極的に他者からのフィードバックをもらうことが重要です。最も避けたいことは、キャリアプランを設計したものの、日常業務のなかで記憶から薄れてしまい、半年後・1年後の振り返り思い出すという状態が続くと機会損失が大きくなります。そのために上司との1on1などの対話の機会を活用して、一緒に考える、ブラッシュアップする機会を定期的に設けることをお勧めします。

求められる自律型キャリア形成を推進していくことは、働く個人にとってメリットがあるものの、難易度は非常に高いものでもあると思われます。

そのため、自分のなかだけで閉じすぎず、他者の力を借りながらも、仮説として設計し、常にアップデートし続けていくことが必要なのではないでしょうか。

そのためにも、1on1などの対話の機会を積極的に活用してもらえればと思います。