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360度評価システムとは? 導入方法と運用のポイント

360度評価を、システムを導入せずに実施すると、評価を依頼したり集計するのに膨大な手間がかかってしまいます。ですが人事担当者は本来、360度評価で得られたデータをいかに活用していくかを考えることに多くの時間を割くべきです。このような担当者の手間や人件費を考えれば、「360度評価システム」を導入することは合理的な選択といえます。

360度評価システムとは?

数年前までは、360度評価を実施するときにExcelなどの表計算ソフトを使って集計していた企業が少なくありませんでした。この手法では、一人ひとりに回答を依頼しなければならないうえに、提出された回答を被評価者ごとに集計・加工しなければならず、膨大な作業が発生してしまいます。

「360度評価システム」を導入すれば、集計や加工はシステム上で自動的に行われるため、これまでの手作業の多くが不要になります。人事担当者はその浮いた時間を、より多くの質の高い回答を得ることや評価データをどのように活用するかを考えることに充てられます。つまり、表計算ソフトで実施していたときに比べ、より効率的で効果的な人事評価および能力開発が可能になるということです。

360度評価システムで「できること」は?

前述のとおり「360度評価システム」は、これまで人事担当者が負っていた多くの手間を省き、360度評価をシステム上で簡単に行えるようにするためのものです。

例えば 360度評価システムには、回答率を上げるために、パソコンだけでなくスマートフォンでも簡単に回答できるように工夫されているものがあります。オフィスにいる時間が少ない職種の人でも、場所を選ばずスキマ時間で回答ができるため、高い回答率が期待できるのです。

また、紙や表計算ソフトだと過去の評価データの管理も煩雑になり、前回との比較が難しくなったり、最悪のケースではその煩雑さゆえに一度きりの実施で終わってしまったりすることも。360度評価システムでは評価データが自動的に蓄積・整理される上、見やすく表示することや前回との比較も簡単にできます。

評価データを「誰に見せるのか」という閲覧権限の設定も、システム導入によって格段にやりやすくなります。表計算ソフトのように、閲覧可否に応じて一つひとつのファイルに共有設定をする必要はありません。

360度評価システムを導入するときの注意点は? 選び方は?

Webツールとして提供されている 360度評価システムは基本的に、会社のアカウントをつくることですぐに利用できるようになります。

費用体系はシステムによってさまざまですが、初期費用の有無や、月額制か売り切り型かといった違いがあります。導入の目的や評価データの活かし方を考えた上で、どのシステムが最適なのか判断しましょう。

比較検討の際に確認すべきなのは、設問項目のカスタマイズ性です。すでに何らかの方法で360度評価を実施している会社であれば、現在運用している設問をシステムで再現できるかが一つの論点になるでしょう。設問数が極端に多い場合は、この機会に設問を見直してみるのも良いかもしれません。

はじめて360度評価を実施する企業は、設問テンプレートがあるかも重要になります。多くの会社の導入事例から効果の高い設問テンプレートを用意しているシステムを選べば、導入のときの設問設定に必要以上に悩まなくて済みます。また、設定した設問を運用途中に変更できるか否かも、忘れずに確認しておきましょう。

効果的に360度評価システムを運用するポイント

導入するときにはまず、評価者と被評価者の双方に対して、システムの使い方をわかりやすく説明しましょう。使い方が簡単であることを知ってもらえば、はじめて使う人の回答に対する心理的ハードルが下がり、回答率の向上につながります

同時に、評価後のフォローアップまでの流れを社員全員が理解できるように説明することも、とても大切です。360度評価がやりっぱなしではなく意義のあるものになることがわかれば、社員も気持ちよく時間を割いてくれるでしょう。

使い方が簡単なシステムを導入したとしても、社員から疑問が上がってくることはあります。360度評価システムを導入するときは、システム運用担当者を最低一人は配置しておくと、社員の疑問にも迅速に対応できます。

また、意外に見落としがちなポイントですが、システムの提供側に運用サポート体制があるかも確認しておく必要があります。特にはじめての場合には、わからないことをすぐに解消できるようにサポートを利用したほうが良いでしょう。

その他にも、評価後のフォローアップとして1on1ミーティングを実施する際にそのメモを残せるようなものであれば、被評価者の気づきや成長のプロセスを蓄積することができます。360度評価の最終的な目標は、社員の成長を促し、チームの力を高めることにあります。そのためには、評価後の1on1ミーティングは欠かせないプロセスといえます。